黒ひげ
アトリエの二学期の最終週は、どのクラスもローソクを作りながらのクリスマス会。ローソクが出来上がるまでの間、お菓子を食べたりジュースを飲んだりおしゃべりしたりと子どもたちにとって一年で一番楽しいアトリエとなる。
ひととおりお菓子を食べ終わると、次はみなさまお待ちかねの"黒ひげ"が登場。樽に短剣を刺していってうまく当たると中の海賊“黒ひげ”が飛び出すという、あの"黒ひげ危機一髪"というゲームのことだ。一般的ルールは飛び上がらせてしまった人が負けというものだそうだが、アトリエのルールは若干違う。黒ひげを飛び上がらせた人が大当たり!となり景品(=飴玉)がもらえるのだ。バヒッという黒ひげの飛び出す音が怖くてみんなおっかなびっくりだが、やっぱり飴をもらう時の顔はうれしそう。
いつ頃からか、ただ黒ひげを飛び上がらせただけでは飽き足らず、飛び上がった黒ひげを空中でキャッチした人が飴をもらえるというルールに進化した。それからというものは飛び上がった黒ひげめがけ一斉に大歓声とともに手があがる。みごとキャッチできた時の喜びようは飴一個では申し訳ないほどだ(事情の知らない人が傍らで見ていたらその熱狂振りにさぞかし驚かれることだろう…)。
その“黒ひげ”に今年またひとつルールが加わった。今までは黙って剣を刺していたところに連想ゲームを加えたのだ。どこに刺そうか手を動かしながら全く違うことを頭で考えることになるので結構難しい。キャッチするタイミングが微妙に狂ってしまうのだ。でも、どの子も一生懸命考えながら声を出すのでどんどん気分が高揚し、黙ってやっていたときとは違う楽しさが加わった。
近頃の子どもは与えられるばかりで遊びの創造力が乏しいといわれるが、なんのなんの、単純なゲームをこんなに楽しくしてしまうなんてたいしたものだ。おまけに連想ゲームをいれたおかげで語彙の豊かな子や発想の面白い子など、子どもたちの違う面が発見でき大収穫だった。
一年でこの一週間だけのお勤めの黒ひげだが、実は初登場からすでに27年も経っている。あちこちに擦り傷が目立つようになってきたが、壊れるまで使ってあげよう。だって黒ひげはアトリエの子どもたちみんなの笑顔と手を知っているのだから。いままで何人の子どもたちが触れただろかと改めて黒ひげを見てみると、そのとぼけた顔がなにやら神々しく見えてきてしまった。そして、まだまだ現役でがんばれますよウインクされたような気がした。
では、来年もよろしくお願いしますね、黒ひげ君!!
みんなで輪になって順番に。
緊張の一瞬…。
次の瞬間爆発!!
「それいけ、捕まえろ!」
こんな感じでアトリエは大興奮。
※いつもはこの輪の中に先生も入っています…