恒例の箱作りに思うこと
いつものことながら、子どもたちの創造力には驚かされる。
今取り組んでいる課題は「箱つくり」。寸法線のかかれている板を切って組み立て、12cm×12cm×9cmの箱をつくること。この課題の狙いは道具の 正しい使い方にある。ノコギリ、カナヅチ、クギヌキ、ヤスリが適切に使えるようになること。その上で、正しく線が切れ、正しく組み立てられればそれで課題 としてはもう十分。これだけでも相当に大変なのだ。そうやって組み立てられた箱をペンキで加飾し出来上がりとなるのだが、子ども達はいとも簡単にこちらの 目標を飛び越えてしまう。四角い箱にペンキで色を付けたり模様を描いたりしただけではものたりないと感じてしまうらしい。より高度(?)な作品を狙うため 四角い箱自体に手を加えるのだ。縁周りにヤスリで波状形を作ったり、縁周りを切ったり、切った木っ端を縁周りに張ったりする。四角く出来上がっている箱を 加工するには廻し挽き鋸を使うのだがそれがまたまた大変。扱い方が難しくなかなか切り進んでくれない。それなのに挑戦する子が毎回いるのだ。去年やってい る子を見ていた子が今年こそと意を決して挑戦したりする。そういう子には一応廻し挽き鋸の大変さを説明するのだが、それでもやってみるという。見るのとや るのとでは大違いなのだが、取り掛かってしまえば後は仕上がるまでやるしかない。途中で弱音も出るがどの子も額に汗してがんばるのは、自分で決めたことだ からと分かっているからなのだ。だから出来上がった時の喜びは何物にも代えがたく、出来上がった「箱」は宝物になるのだろう。
今回も何人かが高度な箱に挑戦している。縁周りを切るのも大変な作業なのだが、「はめ込み模様」に挑戦する子が現れた。はめ込み模様は切り取られた模様 も切り取られた跡もきれいでなければならないため、線の通り切らなければならず一時も気が抜けない作業が続く。箱に組み立てる前の板の段階でそれらをやる のであったなら、廻し挽き鋸ではなく糸鋸が使えるのでずっとやり易くきれいにできるのだが、子どもにそこまでの計画性はない。出来上がった箱を見てから次 を決めるから悪戦苦闘が続くことになる。
今回、創造力という点でもっとも驚かされたのは「透かし模様」をやってみたいと言ってきた子がいたこと。以前にも名前の頭文字を抜いた模様を作った子が いたが、今回は連続の模様をやりたいと言ってきた。去年のSちゃんのビル街のシルエットを切り取ったデザインにも驚かされたものだが、「箱」という課題に は子どもの創造力を刺激するいろいろな可能性がまだまだあり、それを引き出す子どもの柔軟な発想にまたまた感心させられた。
さて、透かし模様の部分に廻し挽き鋸の先がはいるようにドリルで穴をあけ模様をくり抜き始めたが、これから先どのくらいの日数がかかるのだろう。そろそ ろ出来上がる子も現れ始めているというのに一人黙々と廻し挽き鋸を挽いている彼女の頭の中には、出来上がりの図がはっきりと描かれているらしく、時折仕上 げの色の話などもでてくる。どんなに時間がかかってもいいからあなたの納得のいく箱を作ろうね、Yちゃん!