日々是陽陽 2007年

2007年12月20日木曜日

卒業生の力 <今年一年を振り返って>

この12月にアトリエのホームページをリニューアルした。
年内には間に合わないかと危惧していたが、なんとか滑り込めた。

9月の秋風が吹き始めた頃、アトリエの卒業生のまいこちゃんがひょっこりアトリエに顔をだした。パソコンに詳しい彼女に、もっと簡単にホームページを更新できる方法はないかと訊ねたところ、面倒を見てくれることになった。ついでに全面的に手直ししてくれるということでリニューアルを依頼。この時点では9月末、遅くとも10月にはジャ~ンと新しいホームページが出来上がることになっていたのだが、予定は未定。諸事情により遅くなってしまったが、この度めでたくリニューアルオープンと相成った訳である。

新しいホームページは、「緑の大地に昇る太陽」(アトリエCOMのテーマカラーである赤と緑にはこんな意味があるのです)から始まり、我が家の親子のダックス(名前はポポとキキ)も登場。試作の段階で見せてもらったが、アトリエの雰囲気が余すところ無く表現されていて、何度見ても上手く出来ていると感心させられるばかり。言うこと無しの出来栄えだ。ありがとう、まいこちゃん!!
展示室も、個々の作品が大きい画面でも見ることができるようになった。何よりも一年間アップしていなかった作品群を一挙に載せることができ、ほっとしている。(遅くなってごめんなさい。なお、展示室で過去の作品が抜け落ちているところがありますが、随時アップしていきますのでご了承の程を!!)

このホームページリニューアルでアトリエの一年間は無事に終わったが、振り返ってみると、この一年はアトリエの卒業生たちに支えられた一年だったと言える。

今年の最大の目標はアトリエの30周年記念展の開催だった。無事にその目標を達成できた今つくづく思うことは、あれだけのことは、私ひとりでは到底成しえなかったということ。作品搬入搬出、展示、受付、写真撮影等々の裏方の仕事をはじめ、どれだけの卒業生たちのお陰で記念展は出来たのだろう。心からみんなに感謝したい。
なかでも、記念誌を作ることを提案・実行してくれたはるかちゃんには感謝してもしきれない思いがある。会場で記念誌を手にした子どもたちの笑顔もさることながら、記念展後友人知人に送ったところ、想像以上の反響があり、作ってよかった、作ってもらってよかったと何度思ったことか。感謝なんていう言葉では足りないほどの思いをもっている。その記念誌に寄稿してくれた卒業生たちにも同様の思いを重ねている。

まいこちゃん、はるかちゃんをはじめ事あるごとに何かと力になってくれている卒業生たち。今までも、忘年度会に参加してくれたり、夏休みの工作教室の助手をやってくれたり、私の作品展の手伝いをしてくれたりと、いろいろ力になってもらっているが、今回の記念展では卒業生の力の大きさ、可能性を再認識させてもらった。頼もしい限りの卒業生たちを思い、有難いとしみじみ思う昨今である。

今年は大きな大きな収穫のあった良い一年でした。大勢のみなさまに感謝いたします。

2007年5月11日金曜日

三十年史

 新学期早々からアトリエの壁には、「30周年記念展」のおおまかなスケジュールが書かれたお知らせが張られている。アトリエの子ども達には、これから描いたり、作ったりする作品は全部「記念展」に出品するということを伝えてあるので、いつも以上にどの子も真剣に作品と向き合っているのが良くわかる。この子たちの期待に答えられるような「記念展」にしなければと、一層気合が入る。

 そんな折りの4月の半ばに、アトリエの卒業生のHちゃんからメールがあった。「30周年記念展」のお知らせに対する返事だったのだが、思わぬ提案が加わっていた。その提案とは、この機会にアトリエの歴史をまとめて冊子なり、リーフレットのようなものを作りませんかというものだった。「記念展」を催すことだけで頭がいっぱいだった私には思いもよらないことだったが、考えてみれば、こんないい機会はない。歴史なんて大げさなものではないけれど、30年続けていればそれなりの積み重ねもあろうというもの。それをこの機会に振り返り、整理して、明日へ繋げていければこんな素敵なことはない。この節目を大切にしようと改めて確認した。

 うれしいことに、彼女が全面的に協力してくれるという。願ってもないことで感謝感激!

 早速本日、第1回の“編集会議”をふたりで開いた。
 楽しみながら作れればなぁ、と考えています!

2007年4月26日木曜日

ちょっとしたブーム

 このところアトリエでは、「エッシャー」のカタログが引っ張りだこの人気。最近「エッシャー展」があって観にいってきたKちゃんが火付け役になったのだ。

 摩訶不思議なだまし絵のようなエッシャーの絵が子ども達の心をとらえたよう。一人がカタログを開くと必ず2・3人が寄り、「へんだねー」と言いながら階段を指でなぞっていたりする。心がすっきりするどころか一層もやもやになり、頭も混乱してしまうのに、飽かずに眺めている。聞けば、分からないから面白いという禅問答のような答えが返ってくる。

 現実と幻想が、メビウスの輪のようにいつに間にか反転してしまう面白さが、知的好奇心を刺激してやまないのだろうか。エッシャーの作品は、大人も子どもも見る人を選ばないようだ。

 ちなみに、子ども達が愛読(?)しているエッシャーのカタログは、1981年5月に新宿・伊勢丹美術館で開催されたときのものです。
 念のため。

2007年3月24日土曜日

忘年度会

 なんだかオジサンたちの「忘年会」のような響きだが、こちらは「忘年度会」。れっきとしたアトリエの年間行事のひとつ。毎年、学年度末の3月の最後の土曜日クラスが開催日時。アトリエのOBOGにも声を掛けるので、結構賑やかなパーティーとなる。
 参加者は料理一品持参が参加条件なので、こういうパーティーのことを“ポットラックパーティー”というらしい。しかし、アトリエではそんな洒落た名前は使わず、相変らずオジサンくさい「忘年度会」で通っている。

 今年は、久しぶりに懐かしい顔が揃った。平成6年4月から設けた土曜クラスの、いわば一期生たちが来てくれたのだ。あの頃は、小学生や中学生だった彼女たちも今や素敵なレディとなり、アトリエに華やいだ雰囲気をもたらしてくれる。
 その中のひとりがこの5月に結婚するという。もうそんなお年頃になっていたのねぇ、と感慨に耽っていたが、ふと小学生の子と目が合い、現実にもどって可笑しくなった。集っているメンバーは11歳から28歳。。OBOGはお化粧したり、ヒゲをはやしてそれぞれに大人っぽくなっても、昔の面影はそのままだから私から見ればみんな同じに見える。でも、11歳の彼女の目に、ひと回り以上年上の彼らはどのように映っているのか、と想像して可笑しくなったのだった。

 いまどきの子は、年齢差のある子どもとは遊んだり、話したりする機会は少ないと聞くが、アトリエはその数少ない機会のひとつかもしれない。ましてや同じ目的で集っているならば、なおさら仲間。おたがいに、いい刺激を与え合う仲間であって欲しいし、その機会を有効に使って欲しいと願っている。アトリエで一緒だったという連帯感が生まれたら、なおさら嬉しい。

 「忘年度会」は年に一度のその拡大版。これからもこの会を続けていくことによって、ますます年齢差のあるおもしろい会になっていったら、いいなぁ。
 先輩たち、来年も後輩たちのためにぜひ来てくださいね!

2007年3月1日木曜日

抽選会

 今年はアトリエ30周年の年。その節目の記念展を催すため、会場探しにいま動き出している。
 候補を世田谷美術館と三軒茶屋のキャロットタワー内のギャラリーに絞り詳細を調べてみて、交通の便、会場の雰囲気、抽選の確率等から、キャロット内のギャラリーを第一候補にする。本当は芸術の秋、10月か11月の期間を押さえたいのだが、競争率は例年かなり高い模様。“滑り止め”を押さえないことには今年中の開催も危ぶまれるので、まずは9月分の抽選会に挑戦してみることにする。

 抽選はガラガラの抽選機で順番を決め、一番クジを引いた人から順に希望の日を選ぶというもの。抽選に集まった人は全部で8人。そして、私が引いたクジは、なんと8番!順番が回ってきたときには目論んでいた期間はすべて予約済みになってしまっていた…。なにも一番最後を引かなくてもよさそうなのに、やっぱりクジ運のないのがここでも出てしまったのだろうか。
 思えば、昔からクジで良い思いをしたことがない。近所の商店街の歳末大売出しでも、せいぜいポケットティッシュ(参加賞)のひとつ上の醤油ぐらいしか当たったことがないし、色気を出して宝くじを買っても、ささやかな望みにかなう額ですら夢のまた夢。こんな調子だと、10月、11月分の抽選会にも望みが持てそうもない、どうしよう?

 係員の気の毒そうな顔に送られて、抽選会場を後にする。意気消沈。でも、このままスゴスゴとは帰れない。子ども達の顔が頭をよぎり、何とかしなければとの思いが募ってくる。

 この時、私の頭はいつもとは考えられないほど回転していたに違いない。いつもは自分で悲しくなるほど回転ののろいオツムも、切羽詰った状況で次善策の探求に意外な力を発揮した。

 「なにも芸術の秋にこだわる必要もないじゃないか!」
 歩きながらはたと思いあたったのは、まさにコロンブスの卵。夏だっていいかもしれない。夏休みだったら準備に十分時間をかけられるし、子ども達にも夏休みの思い出として提供できるのでは。ちょっと暑くて、“芸術の夏”は少し様にならないけど、会場はクーラー付だから涼しいし。
 急に元気がでてきた。8月の抽選会は終わっているけれど、もしかしたら空きがあるかもしれない。一縷の望みを掛けて受付にもどり、スケジュール表をみせてもらった。クジ運はないけど、神様は見捨ててないのかもしれない。ありました!8月下旬に、待っていたかのような3日間!もう少し日数が欲しいところだが、贅沢は言っていられない。即断即決。よし、この日数で密度の濃い記念展をやろう!

 というわけで、キャロットタワー@三軒茶屋の4階、「生活工房ギャラリー」にて、アトリエCOMの30周年記念展を催します!期間は、8/23(木)~25(土)。

 どうぞお越しください!

2007年2月20日火曜日

フキノトウ

 春が来てうれしいことのひとつに、フキ、セリ、ミツバ、ウドなどの野菜が出回ることがある。香りの高い春の野菜が大好きな私は、八百屋でそれらが目にとまると必ず買ってくる。根ミツバ、セリなどは買ってくると、まず根っこを切り落として土に埋め、しばらくはそれらの収穫を楽しんだりするが、収穫もせいぜい2~3回。なぜが、いつの間にか根っこもろとも無くなってしまう。
 大好きな野草が一種類でもいいから自分のところでふんだんに採れたら、春が来るのがもっともっと楽しくなるのに、と今まで思っていた。そんな東京の庭で望むべくもない理想郷を思い描くのは、以前見た風景が多分に影響している。

 もう20年以上も前になるだろうか、野生のカタクリの群生を見せてくれるという事で秩父の知人宅を訪ねたことある。裏山の奥深くに広がるカタクリはみな下を向いて反り返り木漏れ日を浴びていた。それこそ夢のような、幻想的な光景だった。「カタクリの葉は美味しいんですよ」との知人の言葉は、夢見がちな都会人をハッとさせるものだった。

 カタクリの葉こそ摘まなかったが、道々ノカンゾウやタラの芽を両手いっぱいに摘んで戻った。戻ると今度は奥さんから大きな笊を渡され、庭でミツバを摘んでくるように言われた。その庭は南にゆるやかに傾斜していて、枯れた芝しかみえない。八百屋に並ぶミツバのイメージしかない私にはミツバがあるのか信じられなかったが、庭に出て目が慣れてくると、ここかしこにたくさん生えているのがわかってきた。丈が低く色の濃い、野生のミツバ。背中に傾く太陽を浴びながら、夢中で笊いっぱい摘んだ。食卓へ上った野草の数々。ノカンゾウもタラの芽もおいしかったが、あんなに香りの強いおいしいミツバを味わったのは後にも先にもあの時だけだ。
 それ以来、庭先で野草や野菜を摘んで食卓に並べるのは私の憧れになった。

 あるとき近所の友人からたくさんのフキノトウをもらった。ついでに根っこも分けてもらえないか頼んでみたところ、時期をみて分けてくれるということになった。
 初夏のある日、その友人がフキの葉っぱをどっさり持ってきてくれた。葉っぱを頼んだ覚えはないのにと思いつつ受け取ったのだか、袋の中をのぞくと黒々した土の中にフキの根っこがたくさん。根付くかどうかわからないが、早速植えてみた。春よ来い、春よ来いと子供のように楽しみにしていたが、翌年は数枚の葉っぱだけ。でも根っこは根付いたという手ごたえはあった。
 そしてこの冬、葉っぱの芽かと見紛うほどの小さなフキノトウが出てきてくれた。

 …でもたったひとつ。それも蕾の数の少ない、どう見ても都会っ子のフキノトウ。

 いやいや数や大きさなんて問題ではない、我が家の庭に出てきたということが何よりもかけがえがない。そして今年より来年、来年より再来年とどんどん増えてくれれば、いつかわが家産のフキノトウでフキ味噌が作れる日も来よう。

 今は、かわいいフキノトウを見守っている日々である。刻んで味噌汁の香りにしたら、なんていう家人の言葉は断固拒否。
 こんなかわいいフキノトウ、どうして食べられようか?

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2007年2月1日木曜日

2007年も一ヶ月が過ぎて

 決して忘れていたわけではありません。心が離れたわけでもありません。喉に魚の刺がささったように、いつもいつも心に引っかかっていました。親しい方からどうしたの?と聞かれたこともたびたびでした。いろいろあって…なんて言い訳なんかしません。やっと戻ってきましたので、また、以前のようによろしくお願いいたします。
 何のことかって??このコラムのコーナーのことです。

 今年もはや一ヶ月が経ってしまった。
 毎年月日の流れの速さを感じるのは、歳のせいかとも思うが、決してそればかりではない。先へ先へと想いを募らせていくと、車窓の景色がどんどん流れていくように、自分のペースを超えて時が流れていってしまうように思えるのだ。

 去年がそうだった。しばらくはやらないと決めていた作品展を急にやろうと決めたことから、一年があっという間に過ぎてしまった。正月には作品展のことなどまったく頭になくのんびり過ごしていたのに、松がとれるあたりから、「今年は私の還暦の年、その年に作品展をやらない手はない」「自分で自分のお祝いをしよう」と突然思い立ち、身体が突き動かされた。
 そう思うとじっとしていられず、すぐにギャラリー探しに奔走。ほぼ即決で場所を決め、あとは制作に自分自身を追い込んだ11ヶ月だった。春休みにはここまで、5月の連休にはこれを仕上げて、夏休みにはこっちを作り始めなければ…と、先へ先へと日を追いかけていたような生活。一日いちにちが掌からこぼれ落ちるように過ぎて行ってしまうのが惜しくて、それこそ昼も夜もなく過ごしていた。一日が、一週間が、一ヶ月がなんと速く過ぎていったことだろう。
 そんな訳で、気がつけば11月に入り、そして作品展も終わり、その後片付けをしていたら一年が終わっていた。

 で、今年こそはのんびりいけそうかと思いきや、今年の一年もゆっくり過ごすのは無理そう。まして、もうすでに一ヶ月過ぎてしまっているのだから、これから先も推して知るべし。
 加えて今年の秋は、アトリエの30周年!アトリエの子供たちや卒業生たちと一緒に30周年をお祝いしたいと勝手に考えており、お祝いの企画やら準備やらで今からひとり、心は大忙し。

 そんな折、縁あって新しい生徒さんがアトリエに入会してくれた。紹介してくださった方の名前を聞いた途端、懐かしさで胸がいっぱいになった。その名前は、もうかれこれ10年以上前にアトリエを卒業された方のもの。当時、小学5年か6年生だったと思う。30周年のお祝いの会を設けたなら、そんな懐かしい生徒さんたちも来てくれるだろうか、来てくれるといいなと、考えただけでわくわくしてしまう。
 去年は私の個人的なことで一年を費やしてしまったので、今年はアトリエのために、子供たちのために、この一年を使えたらいいなぁ、と思う。

 車窓の景色も近くは目にも留まらぬ速さで流れ去ってしまうが、遠くの景色は案外ゆっくりと流れて行くもの。この一年、目の前のことにばかり気をとられることなく、遠くを見やるゆとりをもって過したいと思っている。。

 楽しい一年になりそうです。

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